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相続 遺言コラム「相続」ではなく「想族」の気持ちで相続問題に取り組みましょう。

2013年12月執筆記事(著作権は中野へ帰属します)

 最近の相続問題や悩みは複雑になっています。いずれやってくる相続問題に悩む人々はその相談はどこでするのがいいのでしょうか。そして、身内が亡くなり精神的に辛い思いを抱えた中、放っておくことができない相続手続きを進めなければならないなか、仕事や家事、育児などで自身があまり動くことができないという人が多いですが、このような人々は、いったい誰に相談すればいいのでしょうか。

 

ここで平成24年度の最高裁判所 司法統計年報 第42表から52表の内容から読み解くと

 

平成24年度 遺産分割事件数  11737件

うち 調停で成立した事件および認容された事件数 8791件・・・・・A

   弁護士が代理人であった事件数          7638件(Aの65%)

   相続財産が5000万円以下のもの        6621件(Aの56%)

   相続財産が1000万円以下のもの        2824件(Aの24%)

 

この統計から考えられることとは、相続問題で争ってしまい、家庭裁判所に調停を申し立てせざるをえなかった事件のうち、弁護士が関与していないものが35%もあり、相続財産が5,000万円以下で相続税がかからないであろうものが半分以上なのです。少額の相続争いで裁判所が関与しなければならなくなったような案件は、その手前の協議や話し合いの時点で何とか解決できなかったものでしょうか。

 

ところで、私がいままで実務で関わってきた相続発生前の相談と、相続発生後の相続人からの相談のなかでは、次のように相談先を決めて相談に行っている人が多いようです。

 

相続財産が不動産の場合→司法書士 弁護士 行政書士 不動産業者 農協 取引金融機関

相続財産が銀行預金の場合→金融機関

生命保険がある場合→保険会社 保険代理店

株式・投資信託がある場合→証券会社

 

しかしながら

弁護士 司法書士 行政書士→法律面はプロだが、相続財産を調査したのちの財産評価と遺産分割方法の提案は苦手

不動産業者 → 不動産の売買専門 相続物件を売買するには相続手続き必要

保険会社や保険代理店 → 生命保険の相続手続き専門

金融機関・証券会社 → 自行の預金手続きのみ扱う

 

つまり・・・・・それぞれ専門のことはプロだが、それ以外の問題については他へ依頼してほしいといわれることがあります。では、包括的に相談にのってくれる専門家はいないのでしょうか。

 

そのような専門家は FP(ファイナンシャル・プランナー)資格を持つ者であると考えます。AFP・CFPは6課目履修した、いわば ライフプランニングの専門家です。(ライフプランニング・リタイアメントプランニング金融資産運用設計不動産運用設計タックスプランニングリスクと保険 相続・事業承継設計)

 

このように考える理由を述べます。相続開始前と開始後に必要な手続きおよび知識は法律面・財務面・行政面(社会面)の3面なのですが、ファイナンシャルプランニングの視点を持っていれば、この幅広い知識をもって難しい内容にも対応できるのです。

 

法律面・・・・ 相続や契約、家族についての民法知識  後見制度や老い支度についての知識

財務面・・・・ 相続税や贈与税などの税金に関するプランニング知識

        住宅ローンなどの借入とライフプランとの関係

行政面・・・・ 遺族年金等の知識、親亡きあとにのこされた障害者などの家族への公的支援について

 

さらに気をつけるべき点は、相続問題は法律や制度だけで片付けられるものではなく、相続人間や家族で心と心を通わせることによって解決するものであるということです。

 

いままで様々な相続事例に関わってきてすべてに共通するのは、これは「人間」の問題であり、「お金」や「物」だけの問題ではないから、話し合いのなかでも、相手を思いやる気持ちを持つことが重要であるということです。親兄弟を思いやる気持ち、先祖のおかげで自分が生きているのだという気持ち、現在の高齢者の必死の努力によって今のこの国があるのだという気持ち、すべて法律問題とは関係がないかもしれませんが、「ありがとう」の一言で相続問題が解決したことがあります。

 

さらに、法定後見制度と任意後見制度においても法律問題以外に家族の心の面へのフォロー、決め細やかな心遣いや話し方、残された家族が以後生きていくうえでいくらかかるのか、その支援はあるのかどうかについて知識が必要です。

 

法律上の定められている権利は確かに重要ですが、相続問題は人と人とのかかわりにおける問題です。ココロの面を無視していては問題は解決しないのだということを、当事者もその問題をサポートする専門家も決して忘れてはなりません。相続は「争族」だと、文字を置き換えて言われますが、それ以前に「想族」の気持ち、つまり、自身の家族や親族を「想う」気持ちを当事者もそれをサポートする専門家も持つべきなのです。これからやってくる大相続時代には、相続に悩むみなさんも、それをサポートするプロも備えが必要ですね。

 

Yukiko Nakano

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